安宅の音楽日記

タグ:ケンプ

ヴィルヘルム・ケンプの弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ 第 23 番「熱情」を聴きます。1960 年 5 月の録音。有名なステレオ録音による全集とは別テイクです (あちらは 1964 年 9 月の録音)。

ベートーヴェンの三大ピアノ・ソナタとくれば「悲愴」「月光」「熱情」です。私は「悲愴」と「月光」はすぐ好きになったものの、「熱情」だけはどうにも好きになるポイントを見つけられませんでした。むしろ、先に「ワルトシュタイン」の方を好きになったくらいです。といっても、当時、聴いていたのはシュナーベル、ギーゼキング、バックハウスの演奏くらいのものだったのですが...

そんな私が「熱情」に目覚めるきっかけになったのが、ケンプの「熱情」でした。「熱情」で一番盛り上がる第三楽章。ケンプは 8 分 34 秒というゆっくりなテンポで弾きます。しかし、音楽とは凄いですね。ゆっくり弾いても「熱情」の良さを引き出すことができるのです。ケンプの第三楽章は、噛み締める様に楽譜をなぞり、熱いコーダへと流れ込みます。何でも速く弾けば良いってものじゃあないんですね。

ケンプの演奏で「熱情」の良さが分かってみると、手許にあったシュナーベルもギーゼキングもバックハウスも「熱情」が楽しくなりました。その後、沢山の「熱情」を聴きましたが、初めて「熱情」の感動をもたらしたケンプの演奏が私の中で色褪せることはありません。今でも、「熱情」の私的ベスト 3 を聞かれたら、ケンプの演奏を入れることに躊躇いはありません。

このゆっくりなテンポが万人に受けるか、と聞かれると困ってしまいますけどね。

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ベートーヴェンの「エリーゼのために」です。演奏はヴィルヘルム・ケンプのピアノで。

「エリーゼのために」はクラシック音楽の中でもとりわけ有名な曲ですが、CD を探してみると意外と見つかりません。ピアノ名曲集のようなコンピレーション・アルバムに収録されていることが多いです。では、ベートーヴェン弾きとして有名な、シュナーベル、バックハウス、ケンプ、ナット、ブレンデルなどの録音は? というとこれが簡単に手に入らないんですね。

少くともシュナーベル、ケンプは録音があるのを知っていますが、バックハウス、ナット、ブレンデルがエリーゼのためにを録音しているのか知りません (コンサートでアンコールに弾くくらいはしたことがあるでしょうが)。

今回紹介するケンプの演奏も、今、Amazon には在庫がないのかな? ちゃんとした演奏を聴くことが難しい名曲、という意味で面白いと思います。

さて、ケンプの演奏ですが、流れるような曲の始まり。全体的に弱音で揃えられた構成。たまにテンポがゆっくりになるお洒落さ。音楽に浸れる空間を演出します。

ともすると、教科書的な演奏と感じるかもしれませんが、演奏の奥深さは流石は二十世紀を代表するベートーヴェン弾きと唸らされるものがあります。部屋の照明を消して、聴いてみたい演奏です。

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