好きなピアニストは? と聞かれれば、三人の名前を挙げます。ヴァルター・ギーゼキング、セルゲイ・ラフマニノフ、そしてジョルジュ・シフラ。

今回は、好きなピアニストからギーゼキングの演奏でバッハの平均律クラヴィーア全集を取り上げます。

ギーゼキングのバッハを一聴すると、その速いテンポに驚かされます。しかし、何度も聞いていると、速いテンポの中に独特のロマンティックな味わいが在ることに気づきます。

ロマンティックな平均律クラヴィーアと言えば、リヒテルの演奏が有名ですね。リヒテルの演奏の対抗馬としては、全く別スタイルのグールドの演奏も有名です。

ギーゼキングは、グールドの (スタッカートで区切る様な) 奏法とは別のチェンバロ的なピアノ演奏をしているように思います。チェンバロという楽器は、音が伸びませんから、本来バッハが目指していた「音」とはもっと短く、つまりペースの速いものであったと。そこに、現代ピアノのロマンティックさをリヒテルばりに詰めこんだ演奏。それがギーゼキングのバッハ演奏なのではないか? そんな風に考えながら、ギーゼキングの疾風の様な平均律クラヴィーアを聴いています。

※ファースト・チョイスにはお勧めできないモノですけどね。